「浦富海巌勝区八景詠」は、鳥取県の浦富海岸を題材にした漢詩の連作で、歴史地誌学者である国府犀東(こくぶさいとう)によって詠まれました。この詩は、浦富海岸の美しい風景を称え、瀟湘八景(しょうしょうはっけい)という中国由来の風景鑑賞の方法を取り入れています。
また「浦富海巌勝区八景詠」はわかりやすく『浦富八景』ともいわれています。
詩は序詩を含めて9つの詩で構成されており、以下の八景が詠まれています
詩に関しては
鳥取県文化振興財団情報誌アルテ2008年8月の画像をご確認ください。(画像クリック↓)
陸上岬の部分を指し、凝灰角礫岩の断崖で六曲屏風のような景観で、海上から見上げると圧倒されます。東浜展望所から集落が遠く見える風景は、陸(集落)に近い他の浦富海岸とは違う風景です。
六曲屏風(ろっきょくびょうぶ)とは、6枚の画面(扇)をつなぎ合わせた屏風
凝灰角礫岩(河原火砕岩層)でできた羽尾岬の先端(羽尾鼻:正式名嶋山)にある龍神洞は二つの洞窟がありますが、中で一つにつながっています。陸から入る洞窟を裏龍神、海から入る洞窟を表龍神と読んであわせて龍神洞と呼ばれていました。最近では陸の龍神洞、海の龍神洞と呼ぶ人が多くなりました。
裏龍神は崩落が多く現在はいることができませんが中に入ると円礫の浜で左側から波が打ち寄せられその先に進むと砂浜になっています。角度のある断層があり、これに沿って浸食が進んだとされています。
表龍神は凝灰角礫岩に安山岩系の貫入岩があり、これが崩落して洞窟ができました。幅8m高さ10m奥行き150mさらに大岩を超えると50mあわせて200mの奥行があり、山陰海岸最大の洞窟です。
龍神洞の中の様子は山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館の3D映像で観ることができます。
蔵王(ぎおうじま)は熊井浜から望むことができます。
荒砂神社が鎮座する宮島は、現在陸続きになっていますがかつては鳥居の前にも波が来ることもありました。海に浮かぶ向島の恵比寿神社恵比寿(恵美須)神社と併せてぜひ鑑賞してください。
浦富海岸内にある城原海岸の菜種五島は、花崗岩出来た岬が長い年月をかけて浸食し、くぼみが大きくなって洞窟ができていつしか洞門になり、天井が落ちて離れ岩となって5島になり、一番大きく周囲400m高さ30mの一番大きな島を菜種島といいます。かつて菜種を積んだ船が座礁し、この島に自生したことから名づけられたという由来があります。
黒松の木が茂り、ハマグルミ、トベラ、テリハノイバラのような海浜植物と共に菜の花が生育しています。
睡鴨磯は鴨ヶ磯といわれ、大鴨ヶ磯、椿谷、小鴨ヶ磯の3つの浜から成り立っています。鴨が磯の湾口には太郎兵衛島はじめ小さな島も沢山あり、外海に多少の波があっても湾内は静かです。
太郎兵衛島のことを国府犀東は【伯良島はくろうじま】と名付けました
淡紅色の石英砂(1.5mm)の浜で日によっては砂鉄が打ち上げられていることもあります。この奥にはさらに一段高い砂浜があり、その浜を離水浜といい、ずっと古い時代にできた浜で砂が黄色く風化しています。奥の崖も離水浜が形成されたときの古い海食崖です。
湾の東側に小規模な波食棚があり、縦横に割れ目、節理が走っています。また西側にはノッチ(波食窪)が見られ、海底には岩の割れ目やくぼみに小石が入り、それが波によってコロコロ動いて岩を削り、だんだんと大きな穴になったポットホールも見られます。また、椿谷には柱状節理も見られます。
網代地区の千貫松島は観光スポットしても非常に人気が高く、山陰海岸ジオパークトレイルのコースにもあり、また浦富海岸島めぐり遊覧船から間近に鑑賞することができます。
この島の名の由来は、鳥取藩主の池田氏が、あの島にある美しい松をとってきて庭に植えたものに千貫差し上げようといったことからだといわれています。いわゆる、圧倒的な高額を払ってでも欲しいと思わせる美しい松の景観だったという事でしょうね。
江戸時代の「千貫」の価値を令和の貨幣価値に換算するのは、物価や基準が異なるため一概には言えませんが、参考として以下の情報があります。
1貫は銅銭1000枚に相当し、米の価格を基準にすると、1貫はおよそ12万円程度と試算されています。これを基にすると、千貫は約1億2000万円に相当する可能性があります。※ただし、これはあくまで目安であり、時代や地域、物価の変動によって異なる場合があります。
虚空蔵山は山陰海岸ジオパークトレイルの網代側の入り口(浦富海岸自然探勝路)部分にあたります。
かつて、虚空蔵山の頂上は網代の境内として知られ、その頂には虚空蔵菩薩が祀られていたとされています。さらに、山の北側に位置する断崖絶壁の海際には、通常目にするのが難しい大きな洞窟が存在しており、「海賊穴」と呼ばれていました。この洞窟には、但馬国(現在の兵庫県北部)の盗賊が潜んでいたと伝えられており、周辺地域に多大な被害を与えたとの言い伝えが残っています。
浦富海岸島めぐり遊覧船では船長さんの音声ガイドで海賊穴なども観ることができます。
これらの詩は、浦富海岸の自然美や歴史的背景を詩的に表現しており、地域の文化的価値を高めています。また、浦富海岸は「山陰の松島」とも呼ばれ、白砂青松の砂浜や奇岩、洞門、断崖絶壁などが点在する風光明媚な景勝地として知られていますので、この浦富八景をもとに浦富海岸沿岸をウォーキング、遊覧船と併せて鑑賞してください。